Incomplete -この世界にいない君に、恋をした-
「蒼……!」


不安が滲む声。

私のせいで、彼が死ぬ。その恐怖が襲う。


「動くな。……俺が、守る」


短く、それだけ言うと……────


ヒュッ

風が、逆巻いた。
蒼の周囲の空気が、彼の力によってねじれ、光り始める。


「……っ」


彼の足元から、淡い光が広がる。

さっき見たものとは違う、
青白い、命を削り取るような、重くて、危うい光……。


「……俺の目の前で、この世界の好きにはさせねぇ……!」


低く呟いた声と同時に、
蒼が両手を歪みに向かってかざした。


バチッ────!!! ドォォォォォンッ!!!!


空間そのものがぶつかり合うような、凄まじい衝撃波。

私は悲鳴も上げられず、その場に吹き飛ばされそうになる。


蒼の力と、世界の「排除」の力がぶつかり合い、光と闇が渦巻く。


黒い影が、悲鳴のような、呪いのような音を立てて、のたうち回る。


「消えろ……ッ!!!!」



蒼がさらに力を込める。
彼の白い肌が、さらに透き通っていくように見えた。



ドンッ────


空間が弾けて、歪みが、不気味な音を立てながら一気に収束していく。



静寂に包まれた。
風だけが、ゆっくりと流れている。

さっきまで歪みがあった場所には、ただ、燃え尽きたような空間が、不自然に揺らめいているだけだった。



「……終わった?」


恐る恐る、呟く。
声が、震えている。
蒼は何も答えない。


「…………っ、はあぁッ」


ただ、短く、苦しげに息を詰めた。
膝から崩れ落ちるように、その場に片膝をつく。


「蒼?!」


慌てて駆け寄る。


「触るな!!」


咄嗟に、今まで聞いたこともないような、鋭い拒絶の声。
蒼の手は、青白い光を帯びたまま、ピキピキと、まるで硝子のようにヒビが入り始めていた。


「……大丈夫じゃ、ない……よね」


返事はない。
ただ、肩で激しく息をしている。

その背中が、あまりにも痛々しくて、私の心は、罪悪感で押しつぶされそうだった。


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