Incomplete -この世界にいない君に、恋をした-

見回りを終えて戻ってきた蒼の様子がおかしかった。


扉を開けた瞬間、今までとは違う、重苦しい空気が流れ込む。


「……蒼?」


私は毛布を置いて、彼に歩み寄る。
蒼は、いつもなら部屋に入るなり壁際へ向かうのに、今日は玄関に立ち尽くしたまま、荒い呼吸を繰り返していた。

彼の髪の先からは、異世界の雨だろうか、黒く濁った雫が滴り落ちている。


「……蒼、どうしたの……!」


駆け寄ってその腕に触れた瞬間、私は息を呑んだ。

冷たい。氷のように冷え切っている……────


「……触るな、と言っただろ……」


蒼は力なく私を振り払おうとしたけれど、その指先は酷く震えていた。


そのまま彼は支えを失ったように、膝から崩れ落ちる。


「……蒼っ!」


私は彼の肩を必死に支え、部屋の隅にある暖炉のそばまで引きずるように連れて行った。


床に座り込んだ蒼は、自分の胸元を強く掴んで、苦しげに喉を鳴らしている。
彼が呼吸をするたび、その肌には青い紋様が、まるで生き物のように不気味な脈動を繰り返していた。



「……歪み、…か…」


「これ、どうすればいいの……っ、何か薬とか…」



私が慌てて辺りを見回すと、蒼は私の手首を掴んで止めた。



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