Incomplete -この世界にいない君に、恋をした-
「……私、蒼の『糧』になってもいいよ。もし私の感情で、蒼が少しでも楽になれるなら」
「……バカなこと言うな」
蒼は身体を起こそうとしたけれど、眩暈がするのか、すぐに私の膝に倒れ込んだ。
その弾みで、彼の顔が私の胸元に近い位置にくる。
蒼はそのまま、私の胸に顔を埋めた。
「……あつい。お前の鼓動、…うるさい」
「……聞こえてる?」
「あぁ。…まるで、お前がここに生きているって、俺に証明しているみたいで、……ムカつく」
けれど、彼は私から離れようとしない。
むしろ、私の体温を貪るように、深く、深く呼吸を繰り返す。
彼の吐息が私の服を濡らし、それが心臓まで直接触れているような錯覚に陥った。
「……紬。お前が、俺の記憶を…全部塗り替えていく」
「……蒼……?」
「……俺はもう、…お前を帰したくないと、思っているかもしれない」
それは、毒か、魔法か。
初めて聞く彼の「本音」に、私の心臓が大きく跳ねた。
言葉にするにはあまりに重たくて、けれど否定したくないくらい、甘くて。
私は彼の髪を抱きしめるように、そっと手を添えた。
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