Incomplete -この世界にいない君に、恋をした-


天窓から差し込む、この世界特有の淡い銀色の朝陽。


目が覚めたのは、頬を撫でる柔らかな感触のおかげだった。


「……ん……」



薄く瞼を開けると、すぐ目の前に蒼の眠り顔があった。


昨夜、あれほど激しく私を求めていた彼は、今は子どものように無防備で、穏やかな表情で眠っている。


彼の腕は今も私をしっかりと抱きしめていて、私たちはまるで、一つの生き物みたいに重なっていた。



「……おはよう、蒼」


小さな声で囁くと、蒼の長い睫毛が微かに震え、ゆっくりと水色の瞳が開かれた。


彼はしばらくぼんやりと私を見つめていたけれど、やがて満足げに目尻を下げ、私の額に鼻先をすり寄せる。


「……おはよう」


朝一番の彼の声は、昨夜の熱を少し残したまま、低く、甘く響いた。


彼は寝ぼけたまま、私の首筋に刻まれた紋章の近くに唇を落とす。



「……夢じゃなかったんだな。お前が、ここにいる」


「当たり前でしょ。…離れるわけないよ」


私が微笑むと、蒼は愛おしそうに私の頬を掌で包み込んだ。


昨夜のキス、抱擁、そして魂を分け合った感覚。すべてが鮮やかに思い出されて、顔が熱くなる。


蒼もそれに気づいたのか、不敵に口角を上げた。


「顔が赤いぞ。…昨夜のことを、思い出しているのか?」


「……っ、そんなことないっ……!」


「…そうか。なら、もっと思い出させてやろうか?」


彼はそう言って、覆いかぶさるように私を腕の中に閉じ込めた。


朝の気怠さと、昨夜の残香。

蒼の腕の中で、私はまた溶けてしまいそうになる。



.
< 42 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop