Incomplete -この世界にいない君に、恋をした-

彼の心音は、昨夜よりもずっとゆっくりと、穏やかなリズムを刻んでいる。


それが、まるで私を愛しているという合図のように感じられて、胸が締め付けられるほど愛おしい。


外でどんな歪みが渦巻こうと、ここには関係ない。


ただ、蒼の腕の中にいる。それだけで、私は世界で一番の幸せ者だ。



「……また、眠ろう」


蒼はそう言って、私の瞳を覆うように、自分の手で優しく瞼を閉ざさせた。


彼の吐息が、私の鼻先をかすめる。


「……お前が起きるまで、……俺も起きてやらない」


その不器用で、けれど最大限の甘えに、私は堪えきれず小さく笑った。

朝の静寂の中、私たちは互いの温もりの中に、再びゆっくりと沈んでいく。


この隠れ家が、永遠に二人の揺りかごであり続けることを願いながら。




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