恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
しばらくして、祖母が再び目を開いた。

「……あの松澤先生」

ぽつりと言う。

幸子の胸が、わずかに揺れた。

「いい先生ね」

「……うん」

小さく頷く。
それ以上の言葉は、すぐには出てこなかった。

祖母は少しだけ視線を動かし、記憶をなぞるように言葉を続ける。

「あのね、説明してくれたとき……」

言葉を探すように、ほんの少し間があく。

「落ち着いてて……この先生になら、安心しておまかせできるって、思ったの」

祖母の声は、やわらかくて、感じたことをそのまま置いていくような言い方だった。

幸子は、思わず視線を落とす。
あのときの松澤の表情が、ふっと浮かぶ。

「それにね」

祖母は、少しだけ微笑んだ。

「さっちゃんにも、優しい瞳を向けてくれたでしょう」

「……え?」

思わず顔を上げる。
祖母はくすりと笑い、少し言葉を選びながら話しだした。

「うまく言えないけど……ちゃんと気にかけてくれてる感じがしたの」

その言い方は、決して強くはない。

けれど、だからこそ、静かに胸に落ちてくる。
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