恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
「名前は?」

「ミルク」

「いい名前ね」

祖母は目を細め、子猫をそっと撫でる。
その手つきは、どこまでも優しい。
しばらくして祖母が、ふと部屋の中を見渡して、首をかしげた。

「……でも、ずいぶん用意がいいのね」

「え?」

「これも、それも」

視線の先には、いくつもの猫用のおもちゃと、まだ開けていない餌の袋や缶詰。
必要以上に揃っているそれらは、どう見ても幸子の買い物量じゃない。

「……どうしたの?」

その問いは、やわらかかった。
問い詰めるような響きはない。
ただ、気になったから聞いた、という感じだった。

けれど幸子は、一瞬だけ言葉に詰まり、視線を落とす。
何から話せばいいのか、わからなかった。

けれど、ここで誤魔化したくはなかった。

「……あのね」

ゆっくりと、口を開く。

「この子、私が拾ったんだけど……」

そこから、ぽつりぽつりと話し始める。

ミルクのこと。
そして、松澤のこと。
どういう経緯で関わるようになったのか。
何を言われたのか。

全部を話し終えたとき、部屋の中にはしばらく静かな時間が流れた。
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