恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
ラウンジの穏やかな空気の中で、幸子はゆっくりとカップに手を伸ばした。
その仕草は、ほんの少しだけ自然になっていた。

カップを置いたあと、松澤が静かに立ち上がる。

「このまま、少し一緒に居たい。場所、移してもいいか」

低い声が、やわらかく届く。
確認するようでいて、どこか離す気のない響きだった。

幸子は一瞬だけ目を瞬かせてから、小さく頷く。

「……はい」

それだけで、十分だった。

席を立ち、そのまま歩き出そうとした。

そのとき、指先に触れるものがあった。
一瞬だけ、戸惑う。
けれど次の瞬間、松澤の手が自然な動きでそのまま指を絡めた。

強く引くわけではない。
けれど、離さないという意思だけは、はっきりと伝わってくる。

心臓が、小さく跳ねる。
顔が熱くなるのを感じながらも、振りほどこうとは思わなかった。

むしろ、そのままでいたいと思ってしまう。
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