恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
ラウンジを出ると、ホテルの廊下は静かな光に包まれていた。
足音が、やわらかく床に吸い込まれていく。
けれど、さっきまでとは違う。
手のひらから伝わる温もりが、確かにそこにあった。
やがて案内されたのは、同じフロアの奥にあるレストランだった。
大きなガラス越しに街並みを見下ろせる席に通される。
無数の灯りが広がり、ガラスの向こうに都会の夜景が静かに浮かび上がっていた。
松澤と幸子は、落ち着いた照明の中でテーブルに向かい合う。
先ほどまでとは違い、周囲には食事を楽しむ客の穏やかなざわめきがあり、その中に溶け込むように、幸子もゆっくりと椅子に腰を下ろした。
「コース料理でいい?」
「はい」
注文を終えたあと、ふとした間が生まれる。
けれどそれは、もう居心地の悪いものではなかった。さっき、自分の言葉で伝えたものがある。その事実が、二人の間に確かな支えとして残っている。
視線を落とし、テーブルの上に置かれたカトラリーに目を向ける。
そのとき、ふと、顔を上げると、松澤の綺麗な瞳がまっすぐに、こちらを見ていた。
逸らされる気配はない。
一瞬、息が止まる。
逸らすこともできたはずなのに、できなかった。
「……そんなに見るな」
松澤が、どこか苦笑混じりに言う。
「先生こそ見てました」
幸子は反射的に返す。
「見てたか?」
「……はい、見てました」
松澤は小さく息を吐いた。
「そうか?」
短く言って、視線を外す。
横を向いた松澤の耳が、ほんの少しだけ赤い気がした。
幸子は、ふっと小さく息を吐く。
「……じゃあ、おあいこにしておきますね」
そう言うと、松澤の口元がわずかに緩んだ。
足音が、やわらかく床に吸い込まれていく。
けれど、さっきまでとは違う。
手のひらから伝わる温もりが、確かにそこにあった。
やがて案内されたのは、同じフロアの奥にあるレストランだった。
大きなガラス越しに街並みを見下ろせる席に通される。
無数の灯りが広がり、ガラスの向こうに都会の夜景が静かに浮かび上がっていた。
松澤と幸子は、落ち着いた照明の中でテーブルに向かい合う。
先ほどまでとは違い、周囲には食事を楽しむ客の穏やかなざわめきがあり、その中に溶け込むように、幸子もゆっくりと椅子に腰を下ろした。
「コース料理でいい?」
「はい」
注文を終えたあと、ふとした間が生まれる。
けれどそれは、もう居心地の悪いものではなかった。さっき、自分の言葉で伝えたものがある。その事実が、二人の間に確かな支えとして残っている。
視線を落とし、テーブルの上に置かれたカトラリーに目を向ける。
そのとき、ふと、顔を上げると、松澤の綺麗な瞳がまっすぐに、こちらを見ていた。
逸らされる気配はない。
一瞬、息が止まる。
逸らすこともできたはずなのに、できなかった。
「……そんなに見るな」
松澤が、どこか苦笑混じりに言う。
「先生こそ見てました」
幸子は反射的に返す。
「見てたか?」
「……はい、見てました」
松澤は小さく息を吐いた。
「そうか?」
短く言って、視線を外す。
横を向いた松澤の耳が、ほんの少しだけ赤い気がした。
幸子は、ふっと小さく息を吐く。
「……じゃあ、おあいこにしておきますね」
そう言うと、松澤の口元がわずかに緩んだ。