恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
食事を終え、レストランを出ると、夜気がやわらかく頬に触れた。
二人で、並んで歩く。
特別な会話が無くても、不思議と気まずくなかった。

そのとき、お互いの手が触れた。
あっと思った瞬間、松澤の手が、自然な動きでそのまま指を絡める。
強く握るわけではない。
けれど、離さない。

幸子の心臓は、一気に跳ね上がる。
顔が熱くなるのが、自分でもわかった。

けれど、振りほどこうとは思わなかった。
そのままでいたいと思ってしまった。

「……嫌か」

低い声が、すぐ隣で落ちる。
幸子は、首を小さく横に振った。
握られた手から、じんわりと温もりが伝わってくる。

言葉にしなくてもいい。
さっきまで感じていた緊張や不安が、少しずつほどけていく。

隣を見ると、松澤は前を向いたままだった。
幸子の視線に気づいたのか、ふと松澤が微笑んだ。

この人となら、大丈夫だと思えた。理由は、うまく言えない。
それでも、何よりも確かなものとして、そこにあった。
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