恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
テーブル越しではなく、肩が触れそうな距離で並んでいる。

ふと顔を上げると、松澤の横顔がすぐそこにあった。

雨に濡れた前髪がまだ少し額にかかっている。
長いまつげの影が頬に落ち、整った鼻筋が横からでもはっきりわかる。

やっぱり綺麗な人だ、とぼんやり思う。

病院ではいつも少し遠くから見るだけだったから、こんなふうに間近で見たことはなかった。

「どうした」

低い声が降ってきて、幸子ははっとする。

「えっ」

「手、止まってる」

「あ……すみません」

慌ててタオルで子猫の背中を拭く。
子猫は少しだけ力を取り戻したのか、か細く鳴いた。

「にゃ……」

その声に、二人同時に顔を寄せた。

「少し元気出てきたな」

「ほんとですね……」

ほっと息が漏れる。

松澤は子猫の首元を軽く触り、呼吸を確かめた。

「体温はまだ低い。温めたほうがいい」

「湯たんぽならあります」

幸子が立ち上がろうとしたときだった。
つるりと足を取られる。

「……あ」

雨の中を走ってきたせいで、足元が濡れ、滑ったのだ。
倒れそうになった瞬間、腕を掴まれる。
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