恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
それから数日が過ぎた。

いつも通りの日常が流れていく。
受付に立ち、患者の対応をし、カルテを入力する。

表面上は何も変わらない。
けれど、自分の中で何かが少しだけ変わっていることを、幸子ははっきりと感じていた。
迷いながらでも、前に進むと決めたこと。
それが、小さな支えになっている。
周囲の視線や噂にも、以前ほど揺れなかった。


その日の午後。
お昼休みの時間だった。

ポケットの中で、スマートフォンが震える。
画面を見て、表示された名前に、自然と表情がやわらぐ。

――松澤克樹。

迷わず、通話ボタンを押す。

「はい、倉田です」

『今、大丈夫か』

低い声が、耳に届く。

「はい、大丈夫です」

いつもと同じ声なのに、どこか張りつめたものが混じっているように感じた。

『……少し、話したいことがある』

「はい」

『真田先生から連絡があった』

その名前が出た瞬間、胸の奥がわずかにざわつく。

あの夜の視線が、よみがえる。
自分を通して誰かを見ているような瞳。

『倉田に、会いたいと言っている』

理解が追いつかない。

「……私に、ですか?」
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