恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
この日、指定されたのは、ホテルのラウンジ。
幸子と松澤は、約束の時間より早めに着いた。

「大丈夫か?」

「……はい」

 短く頷く。
 その声が、少しだけ硬いことに、幸子は自分でも気づいていた。

 案内された席に腰を下ろす。
 テーブルの上に置かれたカップから、やわらかな香りが立ちのぼる。
 けれど、それを楽しむ余裕はなかった。

 時間が、ゆっくりと流れていく。
 その一分一秒が、やけに長く感じられる。




「お待たせしたかな」

少しして、聞き覚えのある声が、背後から落ちた。

振り返ると、真田が穏やかな笑みを浮かべて立っていた。

「いいえ、私たちも今来たところです」

松澤が立ち上がり、軽く頭を下げる。幸子もそれに続いた。

「こんにちは。ご連絡ありがとうございます」

「こちらこそ、急に呼び出してしまってすまないね」

三人で席に着くと、短い沈黙が落ちた。
先ほどまでの穏やかな空気が、目に見えないところでゆっくりと張りつめていく。

「改めて、……倉田幸子さん、だったね」

「はい」

真田は、ゆっくりと頷き、幸子を見つめる。

「……すまない」

唐突な一言に、幸子は思わず目を見開く。
真田は、慎重に言葉を選びながら続ける。

「急にこんな場を設けたこともそうだが、その前に、ひとつ謝っておきたいことがある。
君のことを、少し調べさせてもらった」
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