恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
思考が、一瞬追いつかなくなる。

「……えっ……」

かすれた声が漏れた。
隣で、松澤の表情がわずかに引き締まる。

「真田先生、それは!」

制する声が入るが、真田は静かに首を振った。

「すまない。でも、どうしても確かめなければならなかった。責任はすべて私にある」

はっきりと言い切る。
その言葉に、場の空気がさらに深く沈んだ。

「その上で、聞いてほしい」

わずかな間を置いて、真田はゆっくりと口を開く。

「昔……君のお母さん、倉田千賀子さんと、恋人同士だったことがある」

「……え……?」

ようやくこぼれた声は、ひどく頼りなかった。

母のこと、目の前の人物、今の状況。すべてが、うまく繋がらない。
真田は、そんな幸子を見つめながら続けた。

「千賀子さんとお付き合いをしていた当時、結婚も考えていた。
 その彼女が、既に鬼籍に入ってしまったなんて……。今となっては後悔ばかりだ」

言葉を失ったまま、幸子はその顔を見つめた。
理解しようとする思考と、追いつかない感情。
そのどちらもが、胸の内でぶつかり合っている。

それでも、目を逸らすことはできなかった。

隣で、松澤がわずかに距離を寄せる。
その気配だけで、確かに支えられていると感じられた。
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