恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
通話が途切れたあとも、しばらくのあいだ、幸子はスマートフォンを耳に当てたまま動けずにいた。
静まり返った部屋の中で、自分の鼓動だけがやけに大きく響いている。

さっき、自分の口で決めたこと。
その重さを、遅れて実感していた。

――DNA鑑定を受ける。

迷いが消えたわけではない。
それでも、進む方向だけは、はっきりと見えている。

ゆっくりとスマートフォンを置いた。
そのとき、着信音が鳴り、小さく震える。

画面に浮かんだ名前を見て、思わず息をのんだ。

――松澤克樹。

「……はい」

『今、少しだけいいか』

さっきと同じ声。
けれど、ほんの少しだけ近く感じる。

『さっきの言い方だと、足りない気がしてな』

「え……?」

『倉田が決めたことは、尊重する。でも……不安になるのは当然だ』

「……はい」

『だが、倉田を一人にはさせない。俺がついてる』

低く、迷いのない声音だった。
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