恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
松澤を見送り、幸子が部屋の戸を静かに閉めた。
外の空気が遮られ、家の中のやわらかな静けさが戻ってくる。

それでも、胸の奥に残っているものは、まだ消えなかった。

「……お茶、淹れるわね」

祖母のいつも通りの声に、少しだけ肩の力が抜ける。
湯気の立つ湯呑みが、そっと目の前に置かれた。
そのやさしい動きに、なぜか胸が詰まる。

「……さっちゃん」

祖母は、向かいに腰を下ろし、静かにこちらを見ていた。

「結果、聞いたんでしょう?」

その一言で、堰き止めていたものが揺れる。

「……うん」

小さく頷く。

それだけで、喉が詰まりそうになる。
祖母は急かさずに、ただ、待ってくれている。

やがて、幸子は呟くように話し出す。

「……やっぱり、そうだったの。真田さんが……お父さん、だった」

言葉にした瞬間、現実が輪郭を持つ。

「……そう」

祖母は、静かに頷いた。
驚くでもなく、取り乱すでもなく。
ただ、受け止めるように。
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