恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
翌朝。

カーテンの隙間から差し込む光で、幸子はゆっくりと目を覚ました。
いつもと同じはずの朝。
それなのに、どこか違う。

昨夜の会話。
祖母の言葉。

そして、松澤の声。

「……ほんとに、ずるい」

小さく呟いて、思わず苦笑する。
あんなふうに言われてしまったら、逃げるなんて選択肢は残らない。
けれどそれは、不思議と嫌ではなかった。

顔を洗いながら、ふと鏡を見る。
少しだけ、表情がやわらいでいる気がした。

(……これ、バレるかも)

そんなことを思ってしまう自分に、また苦笑する。
支度を終えて家を出ると、空気は少しだけひんやりとしていた。

けれど、足取りは軽い。

病院に着き、いつも通り受付に立つ。
患者の対応、電話の取り次ぎ、書類の整理。
変わらない流れの中で、指先だけが少しだけ軽い。

「ねえ、倉田さん」

背後から、同僚の声がかかる。
振り返ると、数人がこちらを見ていた。

「最近、なんか雰囲気変わったよね」

「うんうん、わかる。ちょっと柔らかくなったっていうか」

突然の言葉に、思わず瞬きをする。

「え……そうですか?」

戸惑いながら答えると、くすくすと笑いがこぼれる。
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