恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
最初はぐったりしていた小さな身体も、しばらくするとわずかに動いた。
弱々しいながらも、子猫は指先に顔を寄せる。

「がんばったな」

松澤の柔らかい声が響く。
子猫は安心したように、小さく「にゃ」と鳴いた。
その様子を見て、松澤が息を吐いた。

「少し落ち着いたようだ」

「はい……」

ほっとした瞬間だった。

ふいに、幸子の視界の端で水滴が落ちた。
松澤の袖からだった。

猫を助けるのに夢中で、気がまわらなかった。
ここへ来るまで、松澤もずっと雨に打たれていたのだ。

幸子は慌てて立ち上がり、棚からタオルを取り出した。

「先生、濡れてます。これ、使ってください」

差し出すと、松澤は一瞬だけ幸子を見た。
それから、ふっと小さく息を吐く。

「……君も濡れてる」

「え?」

言われて、自分の姿を見下ろす。
確かにスカートの裾はかなり濡れていたし、、髪もしっとりしている。
でも、それは走ってきたときからわかっていたことだ。

「私は大丈夫です。先生が服をかけてくれましたから」

「大丈夫じゃない」

短く言うと、松澤は幸子の手からタオルを取った。

そして……ふわりと、タオルを、幸子の頭から被せた。

「……え?」
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