恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
食事が始まり、ゆっくりと時間が流れていく。
最初はぎこちなかった会話も、少しずつほどけていき、気づけば小さく笑い合う場面も増えていた。

「……こんなふうに、新しいお店に行くの楽しみです」

グラスを手にしたまま、ふとそう漏らす。

「そうか」

「はい。この前、先生に連れて行ってもらったお店も……素敵だったし、とても美味しかったです」

幸子は、自分でも驚くほど、自然に話せていることに気づく。
言葉を遮ることも、急かすこともなく、松澤は、相槌を打ちながら静かに聞いていた。

その距離が、心地いい。

やがて食事が一段落し、デザートが運ばれてくる頃には、最初に感じていた緊張は消えていた。

「……来てよかったです」

幸子が小さく笑う。

その瞬間、松澤の視線がふっと止まった。

「……どうしました?」

視線に気づいて幸子が首を傾げると、松澤は小さく息を吐いた。

「いや」

「?」

「今日、いつもより可愛く見えて、反則だなと思っただけだ」

「……え?」

不意打ちの言葉に、幸子の頬が一気に熱くなる。





レストランを出ると、夜の空気がやわらかく肌に触れた。
さっきまでの静かな時間の余韻が、そのまま外の空気に溶けていくようだった。

「……少し、歩こうか」

「はい」

幸子も迷わず頷く。

まだ、この時間を終わらせたくないと思っている自分に気づいていた。
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