恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
並んで歩く。
歩幅は自然と合っていた。
しばらくして、視界の先にゆっくりと回る光が見えてくる。

「あ……」

思わず、声が漏れる。

「観覧車……」

夜の中で浮かび上がるその姿は、どこか現実離れして見えた。
松澤は、幸子の反応を確かめるように、わずかに視線を向ける。

「乗るか」

問いかける声は、あくまで穏やかだった。

「……いいんですか?」

「嫌ならやめる」

幸子は、ほんの一瞬だけ考える。
けれどすぐに、小さく首を振った。

「……いえ」

そして、少しだけ笑う。

「ちょっと意外で、びっくりしただけです」

松澤は、それを聞いてから、わずかに頷いた。

「なら、行くか」

二人で並んで、観覧車の入り口へ向かう。

さっきまでよりも、ほんの少しだけ近い距離で。

ここから先が、“特別な時間”になることを、どこかで予感しながら。
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