恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
乗り込んだゴンドラの扉が閉まると、外の音が切り離された。

ゴンドラがゆっくりと上昇をはじめ、地上のざわめきが次第に遠のいていく。
窓の外には、街の灯りがひとつひとつ輪郭を持って広がり、さっきまで自分たちがいた場所が、まるで別の世界のように見えてくる。

幸子はしばらくその光景を眺めていたが、ふと視線を戻したとき、松澤が静かにこちらを見ていることに気づいた。

逃げるように逸らすことは、もうしなかった。
そのまま、ゆっくりと向き合う。

「幸子」

名前を呼ばれる。

それだけで、胸の奥がはっきりと反応するのがわかる。

「さっきの続きだ」

低く落ちる声は、急かすものではないのに、自然と姿勢を正させる響きを持っていた。

松澤はポケットから小さな箱を取り出し、幸子の膝の上にそっと置く。

「……開けてみてほしい」

意味を持つ誘いに、胸の鼓動が高鳴る。

幸子は一度だけ息を整え、その箱を手に取った。
指先に伝わる重みが、やけに現実的に感じられる。

ゆっくりと、蓋を開ける。

中に収められていたのは、細身でシンプルなリングだった。
中央に一粒の石が、夜景の光を受けて静かに輝いている。
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