恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
観覧車を降りたあとも、しばらくのあいだ、幸子は指先に残る感触を意識していた。

薬指に収まったリング。
触れるたびに、それが現実だと確かめるような気持ちになる。

隣を歩く松澤は、いつもと変わらない表情をしているのに、その距離だけがほんの少し違って感じられた。
ふと、指先を軽く握ると、すぐにそれに応えるように、松澤の手が重なった。

そのとき、

「……幸子」

低い声が、すぐ隣で落ちる。

「はい」

顔を上げると、松澤の視線がまっすぐに向けられていた。

「この先のことなんだが……」

その言葉に、胸の奥がわずかに引き締まる。

「正式に、婚約者として両親に会って欲しい」

静かに告げられる。

その言葉が落ちた瞬間、胸の奥が、わずかに強く波打った。

(いよいよ、現実になる)

逃げ場のない場所に、踏み込む感覚。

「……はい」

小さく頷いた。
その様子を見て、松澤は一度だけ視線を落とし、それから続る。

「そのあとで……改めて、幸子のおばあさんにも挨拶に行くつもりだ」
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