恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
思わず、瞬きをする。

「……え?」

予想していなかった言葉だった。

「幸子の大切な家族だろう。だから、ちゃんと会っておきたい」

その一言が、胸にまっすぐ落ちた。

「……ありがとうございます」

気づけば、そう言っていた。
松澤はそれに対して、軽く首を振る。

「いや、おばあさんにも安心してもらわないとな」

ぶっきらぼうな言い方。
けれど、その奥にある気遣いは隠れていない。

「それと、両親の件だが」

松澤は視線を戻した。

「母は……少し、厳しい人だ」

「……はい」

「無理に取り繕う必要はない。幸子は、そのままでいい」

その言葉に、余計に背筋が伸びる。

「……でも、私……ちゃんとできるか……」

最後まで言い切る前に、手にわずかな力がこもった。

「大丈夫だ。俺が隣にいる」

それだけで、十分だった。
幸子は、小さく息を吐く。

完全に不安が消えたわけではない。

それでも、一人ではない。
その事実だけで、踏み出せる気がした。

「……はい」

今度は、少しだけしっかりと頷く。

夜の空気の中で、二人は並んで歩き続ける。
指先に伝わる温もりと、薬指の小さな重み。
それは、未来へ進んでいるという、確かな証だった。


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