恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
やがて、遠くからサイレンの音が近づいてくる。

「救急隊が到着します!」

スタッフの声。
入り口の方が慌ただしくなる。

「状況は?」

救急隊員が駆け寄ると、松澤は簡潔に説明した。
引き継ぎは、ほんの数十秒で終わった。
そのときだった。

「先生、このまま付き添っていただけますか?」

隊員の言葉に、松澤は一瞬だけ視線を幸子へ向ける。
幸子は、何も言わず頷いた。
すると、松澤は隊員へと「わかりました」迷いなく答え、そのまま、立ち上がる。

「倉田……すまない」

短い言葉だった。
けれどその声には、患者ではなく“幸子を置いていくこと”への心配が滲んでいた。

「いえ、行ってください」

幸子のためらいのない返事に、松澤は、ほんのわずかに目を細めると、救急隊とともに歩き出した。

担架が運ばれ、慌ただしく店の外へと出ていく。
その背中を、幸子は静かに見送った。
松澤の姿が見えなくなった途端に、取り残されるような不安が押し寄せ、胸の奥がきゅっと締めつけられる。

(先生……)
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