恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
玄関の扉が閉まり、松澤の足音が遠ざかっていく。
その音が完全に聞こえなくなってからも、幸子はしばらくその場から動けずにいた。
胸の奥が、まだ熱を持っている。
さっき抱きしめられた感触も、“ここに”と囁かれた声も、まだ、その余韻が残っている。
思わず、自分の胸元へそっと手を当てる。
すると、腕の中のミルクが小さく鳴きながら身じろぎした。
「……あ、ごめんね」
苦笑しながら抱き直すと、ミルクは安心したように喉を鳴らし、そのまま幸子の腕の中へ体を預けてくる。
そのぬくもりに触れた瞬間、不思議と笑みがこぼれる。
「さっちゃん」
不意に、後ろから祖母の声がする。
振り返ると、祖母がお盆を持ったまま、やわらかな目でこちらを見ていた。
「お茶、すっかり冷めちゃったわ」
その言い方があまりにもいつも通りで、思わず小さく笑ってしまう。
「……ごめんね」
「謝ることじゃないわよ」
祖母はそう言って、居間へと戻っていく。
幸子もミルクを抱えたまま、その後を追った。
テーブルに向かい合って座る。
湯呑みに新しいお茶が注がれ、ふわりと湯気が立ち上る。
胸の奥にあるものをゆっくり整理させてくれるような時間だった。
祖母は、すぐには何も聞かなかった。
ただ、お茶をひと口飲み、それからふっと目を細める。
「……幸せそうな顔してる」
その一言に、幸子の肩がぴくりと揺れる。
「おばあちゃん……」
「違う?」
からかうわけではない。
ただ、嬉しそうだった。
その音が完全に聞こえなくなってからも、幸子はしばらくその場から動けずにいた。
胸の奥が、まだ熱を持っている。
さっき抱きしめられた感触も、“ここに”と囁かれた声も、まだ、その余韻が残っている。
思わず、自分の胸元へそっと手を当てる。
すると、腕の中のミルクが小さく鳴きながら身じろぎした。
「……あ、ごめんね」
苦笑しながら抱き直すと、ミルクは安心したように喉を鳴らし、そのまま幸子の腕の中へ体を預けてくる。
そのぬくもりに触れた瞬間、不思議と笑みがこぼれる。
「さっちゃん」
不意に、後ろから祖母の声がする。
振り返ると、祖母がお盆を持ったまま、やわらかな目でこちらを見ていた。
「お茶、すっかり冷めちゃったわ」
その言い方があまりにもいつも通りで、思わず小さく笑ってしまう。
「……ごめんね」
「謝ることじゃないわよ」
祖母はそう言って、居間へと戻っていく。
幸子もミルクを抱えたまま、その後を追った。
テーブルに向かい合って座る。
湯呑みに新しいお茶が注がれ、ふわりと湯気が立ち上る。
胸の奥にあるものをゆっくり整理させてくれるような時間だった。
祖母は、すぐには何も聞かなかった。
ただ、お茶をひと口飲み、それからふっと目を細める。
「……幸せそうな顔してる」
その一言に、幸子の肩がぴくりと揺れる。
「おばあちゃん……」
「違う?」
からかうわけではない。
ただ、嬉しそうだった。