恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
子猫は、しばらくすると少しずつ動き始める。
目がうっすら開き、指先を探すように顔を寄せてきた。
ストローをスポイト替わりにして、温めたミルクをあげると、ペロペロと必死に舐めている。

「……よかった」

心の底から安堵がこぼれる。
松澤も子猫の様子をじっと見ていた。

「反応は出てきたな」

「助かりそうですか?」

思わず聞くと、松澤は少しだけ口元を緩めた。

「まだ油断はできないけどな。さっきよりはずっといい」

その言葉に、幸子はほっと息を吐いた。

子猫はタオルの上で、ふにゃ、と小さく鳴く。
その声が可愛くて、思わず頬が緩む。

「……あの、この子の名前どうしましょう」

言ったあとで、少し恥ずかしくなる。
名前なんて、気が早いのかもしれない。

けれど松澤は子猫の頭を軽く撫でながら、少し考えて言った。

「そうだな……呼び名はあったほうがいい」

幸子はくすっと笑う。

「いい名前を考えないとですね?」

子猫は、また小さく鳴いた。
そこで松澤がふと顔を上げ視線が幸子に向く。

「そういえば、君の名前、聞いてなかった」

「あ……」
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