恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
幸子は、そっとミルクの背中を撫でる。

「でも……先生となら、ちゃんと向き合っていける気がするの」

祖母はしばらく何も言わなかった。
やがて、小さく息を吐く。

「……そう」

その声は、どこまでもやさしかった。

「千賀子も安心するわね」

その名前を聞いた瞬間、胸の奥がじんわりと熱くなる。
母はもういない。
けれど、自分の幸せを願ってくれている人は、ちゃんとここにいる。

祖母は目を細めながら、ゆっくりと言葉を続けた。

「さっちゃん、昔は人に頼るのが苦手だったでしょう?」

思いがけない言葉に、幸子は少し目を丸くする。

「なんでも一人で頑張ろうとして……我慢して、笑って、大丈夫って言う子だった」

祖母は、小さく笑った。

「でも今は、ちゃんと甘えられる人が出来たのね」

その言葉が、胸に深く落ちる。

幸子は、ゆっくりと視線を落とした。

膝の上では、ミルクが安心しきったように眠っている。

そのぬくもりを感じながら、幸子はそっと頷いた。

「……うん」

今なら、ちゃんとわかる。
一人で頑張ることだけが、強さじゃない。
誰かと一緒に生きていきたいと思えることも、きっと同じくらい大切なのだと。
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