恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
夕方の外来が終了し、待合スペースの電気が暗くなる。
受付で最後の書類整理を終えた幸子は、小さく息をつきながらロッカー室へ向かう。
制服の上に薄いカーディガンを羽織り、スマートフォンを見ると、短いメッセージが届いていた。
『正面玄関横で、待ってる』
胸の奥が、わずかに熱を持つ。
急ぎすぎないように気をつけながら病院を出ると、夜の空気が頬を撫でた。
正面玄関はすでに閉まり、人通りもほとんどない。
その脇の外灯の下に、松澤が立っていた。
ダークグレーのスーツ姿。
幸子に気づくと、松澤は静かに視線を向けた。
「お疲れさま」
低く落ちる声。
その自然な響きに、不思議と肩の力が抜ける。
「お疲れさまです。お待たせしました」
「いや」
短く返しながら、松澤は自然に手を差し伸べる。
少しの恥ずかしさを心に隠し、幸子は大きな手を取った。
恋人繋ぎで、並んで歩き始める。
けれど――
「あれ……?」
不意に、後ろから小さな声が聞こえた。
振り返ると、病棟勤務の看護師が、コンビニ袋を片手に立ち止まっている。
目を丸くしたまま、幸子と松澤を交互に見ていた。
「えっ、松澤先生と倉田さん……?」
その視線で、すべてを察したらしい。
幸子は一瞬だけ頬が熱くなる。
けれど、隣の松澤は表情を変えなかった。
隠す様子も、取り繕う様子もない。
ただ、ごく自然に幸子の隣へ立っている。
その落ち着いた態度のせいか、不思議と幸子の方まで冷静になっていく。
「……お疲れさまです」
幸子が頭を下げると、看護師はまだ少し混乱した顔のまま、
「お、お疲れさまです……!」
と返した。
そして数秒後、
「あっ……そういう事……!」
そう呟き、何かを悟ったような顔をして、そのまま去っていく。
その背中を見送りながら、幸子は思わず小さく息を吐いた。
「……明日、絶対すごいことになりますよね」
半分諦めたように呟くと、松澤はわずかに視線を向ける。
「困るか」
その問いに、幸子はほんの少しだけ考えてから、小さく首を振った。
「……少し恥ずかしいですけど、嫌じゃないです」
その返事を聞いた瞬間、松澤の目元がほんのわずかにやわらいだ。
「そうか」
その声は、驚くほど優しかった。
受付で最後の書類整理を終えた幸子は、小さく息をつきながらロッカー室へ向かう。
制服の上に薄いカーディガンを羽織り、スマートフォンを見ると、短いメッセージが届いていた。
『正面玄関横で、待ってる』
胸の奥が、わずかに熱を持つ。
急ぎすぎないように気をつけながら病院を出ると、夜の空気が頬を撫でた。
正面玄関はすでに閉まり、人通りもほとんどない。
その脇の外灯の下に、松澤が立っていた。
ダークグレーのスーツ姿。
幸子に気づくと、松澤は静かに視線を向けた。
「お疲れさま」
低く落ちる声。
その自然な響きに、不思議と肩の力が抜ける。
「お疲れさまです。お待たせしました」
「いや」
短く返しながら、松澤は自然に手を差し伸べる。
少しの恥ずかしさを心に隠し、幸子は大きな手を取った。
恋人繋ぎで、並んで歩き始める。
けれど――
「あれ……?」
不意に、後ろから小さな声が聞こえた。
振り返ると、病棟勤務の看護師が、コンビニ袋を片手に立ち止まっている。
目を丸くしたまま、幸子と松澤を交互に見ていた。
「えっ、松澤先生と倉田さん……?」
その視線で、すべてを察したらしい。
幸子は一瞬だけ頬が熱くなる。
けれど、隣の松澤は表情を変えなかった。
隠す様子も、取り繕う様子もない。
ただ、ごく自然に幸子の隣へ立っている。
その落ち着いた態度のせいか、不思議と幸子の方まで冷静になっていく。
「……お疲れさまです」
幸子が頭を下げると、看護師はまだ少し混乱した顔のまま、
「お、お疲れさまです……!」
と返した。
そして数秒後、
「あっ……そういう事……!」
そう呟き、何かを悟ったような顔をして、そのまま去っていく。
その背中を見送りながら、幸子は思わず小さく息を吐いた。
「……明日、絶対すごいことになりますよね」
半分諦めたように呟くと、松澤はわずかに視線を向ける。
「困るか」
その問いに、幸子はほんの少しだけ考えてから、小さく首を振った。
「……少し恥ずかしいですけど、嫌じゃないです」
その返事を聞いた瞬間、松澤の目元がほんのわずかにやわらいだ。
「そうか」
その声は、驚くほど優しかった。