恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
夜風が、やわらかく二人の間を抜けていく。
その沈黙は、どこか心地よかった。

やがて家へ着き、玄関を開けると、子猫が小さな声を上げながら駆け寄ってきた。

「ただいま」

しゃがみ込んで抱き上げると、子猫は甘えるように幸子の腕へ顔を擦りつける。
その様子を見ていた松澤が、小さく息を漏らした。

「甘ったれになったな」

「先生が甘やかすからですよ」

そう返すと、松澤は否定しなかった。

「ミルクちゃん、先生のこと好きなのねぇ」

祖母が湯呑みを置きながら、くすっと笑う。

するとミルクは、まるで返事をするみたいに小さく鳴いた。

少し談笑したあと、「私はお風呂入ってくるわね」と祖母が気を遣うように席を外す。

静かになった居間で、松澤は持ってきていた封筒をテーブルへ置いた。

「……これ」

「え?」

幸子が首を傾げると、松澤は封筒を開き、中の資料を広げる。
そこには、いくつかのマンションの資料が綺麗に揃えられていた。

「……マンション?」

「新居候補」

さらりと言われて、幸子は思わず瞬きを繰り返した。
しかも、どれも設備やセキュリティーが整った高級マンションばかりだ。

「すごい……」
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