恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
居間には、やわらかな静けさが流れていた。
テーブルの上には、新居候補の資料が並んでいる。

幸子は、資料を一枚ずつ眺めながら、小さく息をつく。

「……迷いますね」

「どれもペット可だからな。ミルクも連れて行ける」

松澤は即答した。
その迷いのなさが、なんだか松澤らしくて、幸子は小さく笑う。

けれど次の瞬間、ふと現実的なことが頭をよぎった。

「……結婚式って、どうするんでしょう」

その言葉に、松澤が静かに視線を上げる。

「お前の好きにしていい」

あまりにも自然に返されて、幸子は思わず瞬きをした。

「え……?」

「やりたいならやればいいし、やりたくないならやらなくてもいい」

淡々とした口調だった。
けれど、その中に“お前に合わせる”という意思がはっきり見える。
幸子は少しだけ困ったように笑う。

「でも……そういうわけにもいかないですよね」

「どういう意味だ」

「先生の招待客です」

その一言で、松澤がわずかに黙る。

「教授の先生方とか、病院関係の方とか……きっと、普通の式にはならないですよね」

松澤ほどの立場なら、完全に“身内だけ”というわけにはいかない。
きっと自分が想像している以上に、色々な人間関係が絡む。
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