恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
そう思うと、少しだけ肩に力が入った。
その様子に気づいたのか、松澤が低く口を開く。

「無理に合わせる必要はない」

「でも……」

「お前が疲れるようなことはさせたくない」

静かな声だった。
その言葉は嬉しい。
けれど同時に、これは自分一人で決めていい問題でもない気がした。

幸子は少しだけ考え込んでから、そっと顔を上げる。

「先生のお母様……智代さんに、相談してみるのはどうでしょう」

その瞬間だった。
松澤の表情が、わずかに止まる。

「……母さんに?」

「はい」

幸子は静かに頷く。

「先生のお付き合いって、やっぱり大切だと思うんです。それに……智代さん、ちゃんと考えてくださる方だと思うから」

ホテルラウンジで会った時のことを思い出す。
隙の無い雰囲気で、厳しそうな感じの人だった。
けれど、あの人は表面だけで判断せず、その人自身を見ようとしてくれる。
だからこそ、怖いだけの人ではないと思えた。
しかし松澤は、珍しくすぐには返事をしなかった。
子猫を撫でていた手が、ほんの少しだけ止まる。

「……おすすめはしない」

低く落ちた声。
幸子は、少しだけ目を丸くした。

「え?」
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