恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
「……ミルク?」
「さっきミルクあげたから」
自分でも安直すぎると思って、すぐに言い直す。
「やっぱり変ですね」
「いや」
松澤が静かに言った。
「悪くない」
「ほんとですか?」
「呼びやすい」
子猫の頭を軽く撫でながら、松澤は言う。
「ミルク」
すると子猫は、まるで反応したみたいに「にゃ」と鳴いた。
幸子は目を丸くする。
「今、返事しましたよね」
「したな」
松澤の声が少しだけ柔らかくなる。
「じゃあ……ミルクで決まりだな」
不思議な気持ちだった。
ついさっきまで、ほとんど会話をしたこともなかった相手なのに。
二人で一緒に、子猫の名前を決めている。
それが、なんだか少し嬉しくて、心がホワホワとあたたかくなる。
そのとき。
ぐう、と小さな音がした。
「……!」
かぁっと、頬があつくなる。
幸子は慌ててお腹を押さえ、松澤の方をちらりと見る。
「今の」
「……すみません」
幸子は恥ずかしくなって顔を伏せた。
「まだ夕飯、食べてなくて……」
「俺もだ」
「え?」
思わず顔を上げる。
松澤は当たり前のように言った。
「何か頼むか?」
それを聞いて、幸子は少し悩む。
冷蔵庫には、作り置きの食材がつまっている。
二人分なら、どうにかなりそうだ。
「……もしよかったら、簡単なものですけど、作ります」
「いいのか?」
「はい。どうせ私も食べますし」
松澤はほんの一瞬考えてから、静かに頷いた。
「じゃあ、遠慮なく」
その言葉に、ほっとする。