恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
コンロに火をつけ、鍋を掛ける。
冷蔵庫から卵と野菜を取り出し、慣れた手つきで包丁で刻むと、トントントンと小気味いい音が台所に響く。

母が亡くなり、祖母と二人暮らしになってから、料理は祖母に仕込まれた。
節約も兼ねて、外食なんてほとんどしない。

湯気が立ち上り、味噌をゆっくり溶かすと、ふわりと良い香りが台所に広がった。
松澤はテーブルの向こうで、その様子をじっと見ていた。

「……手慣れてるな」

「毎日作ってますから」

「そういう意味じゃない」

松澤は少しだけ目を細める。

「動きが無駄ない」

幸子は照れくさくなって、鍋をかき混ぜた。
やがて、簡単な夕食がテーブルに並ぶ。

卵焼きに、作り置きの煮物。
ほうれん草のおひたし。
手造りのお新香。
味噌汁とご飯。

派手な料理じゃない。
でも祖母が教えてくれた、優しい味のする食事だ。

「どうぞ」
< 22 / 82 >

この作品をシェア

pagetop