恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
そのとき、開けっぱなしのキャリーケースから、ミルクがひょこっと顔を出した。

松澤は組み立て途中の手を止める。

「……来るか?」

低い声で呼びかけると、ミルクは警戒することなく、とことこと近づいていった。
そして当然のように、松澤の足元へ座る。

「……ミルクも克樹さんのことが大好きですね」

そう幸子が呟くと、松澤は少しだけ眉を上げた。

「家族になるなら、嫌われない方がいいだろ」

その言葉に、幸子の胸が強く揺れる。

“家族”。

あまりにも自然に言われたその一言が、ひどく嬉しかった。
窓の外では、夕暮れの光が新しい部屋をやわらかく照らしていた。
その景色の中に、自分の帰る場所があるのだと、幸子は静かに実感していた。

キャットタワーが完成すると、子猫は好奇心いっぱいの様子で、軽やかに飛び乗る。

「わ……すごい」

幸子が思わず笑うと、その背後から、そっと腕が伸びてきた。

「っ……克樹さん?」

驚く間もなく、後ろから包み込まれる。
広い胸に背中が触れた瞬間、幸子の心臓は大きく跳ねた。

「そんな顔するな」

低い声が、耳元へ落ちる。

「……どんな顔ですか」

「可愛い……」

その言葉だけで、胸の奥が熱くなる。
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