恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~


松澤は、その声を確かめるように目を細めると、そっと幸子の頬に触れた。
指先がやさしく肌をなぞる。
それだけで、身体の奥まで甘く痺れるようだった。

「疲れてないか」

低い声が落ちる。

その問いかけが、ひどく松澤らしくて、幸子は思わず小さく笑ってしまう。
さっきまで張りつめていた緊張が、少しずつほどけていく。

その表情を見た松澤が、わずかに安堵したように息を吐いた。

「無理はさせない」

静かな声だった。

「だから、嫌なことがあったらちゃんと言え」

その言葉に、胸の奥がじんわりとあたたかくなる。

幸子は小さく頷いたあと、そっと松澤の服を掴む。

「……嫌じゃ、ないです」

消え入りそうな声。

「……私も……あ、愛してます」

けれど、それはちゃんと届いたらしい。
松澤の瞳が、ゆっくりと揺れる。

「ん……俺も、愛している」

その返事は、どこか掠れていた。

次の瞬間、そっと身体を引き寄せられる。
広い胸に触れた途端、心臓が大きく跳ねた。
耳元で、規則正しい鼓動が聞こえる。
自分と同じように、この人も緊張しているのだと気づいた瞬間、不思議と怖さが薄れていく。

「幸子」

低く、甘く名前を呼ばれる。
< 221 / 223 >

この作品をシェア

pagetop