恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~


その声に導かれるように顔を上げると、唇がやさしく重なった。

最初は、触れるだけの静かなキス。
けれど離れたあとも、互いに距離を取れなかった。

呼吸が近い。
視線が絡む。

もう一度、ゆっくりと唇が重なる。

今度は少しだけ深く。
抱き寄せる腕に、わずかに力がこもる。

けれど急かすような強引さはなく、まるで大切なものを確かめるような触れ方だった。

窓の外では、波の音が静かに響いている。

オレンジ色だった空は少しずつ群青へ変わり、ヴィラの中にはやわらかな灯りだけが残されていた。

キスの合間に、額がそっと触れ合う。

「……綺麗だな」

掠れた声が落ちる。

「海、ですか……?」

聞き返すと、松澤は小さく笑った。

「違う」

その答えだけで、また胸が熱くなる。
幸子は恥ずかしさに耐えきれず、そっと松澤の胸元へ顔を埋めた。
すると、低く笑う気配がする。

「……ほんとに、かわいいな」

その一言に、さらに顔が熱くなる。
松澤は、幸子の左手を手に取り、自分の口元へ寄せた。
そして、薬指に嵌められた指輪へとキスを落とす。
熱を帯びた松澤の瞳から、漂う色気に当てられ、幸子は言葉を失った。
それから、ふたりは、ゆっくりと、シーツの海に揺蕩う。


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