恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~

──やっぱり……ね。

心のどこかで、納得してしまう。

こういう会話には慣れている。
松澤の話題は、いつも職員の間で出る。

「でもさ、相変わらず先生ってば、クールよね」

もう一人が小さく笑った。

「マジ、隙が無さ過ぎ」

くすくす笑い声。

「でも、優しくされたら絶対落ちる」

「それはわかる」

そして、ふと声が下がる。

「ていうかさ」

「ん?」

「クラ子、さっき固まってなかった?」

幸子の手が止まった。

クラ子。

それは、幸子につけられたあだ名だ。

倉田だから、クラ。そこに、幸子の子で、クラ子。
でも、名前を省略しただけじゃない。

嘲笑してつけられたのだ。

初めて聞いたときは少し傷ついたけれど、今はもう聞き慣れた。

(……ちょうどいい)

胸の奥で、そっと呟く。

自分は、その程度の存在だと。
勘違いなんて、しないように。
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