恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
外科医の松澤克樹、31歳。
海外帰りの若きエースとして期待の人物。患者からの評判も高い。腕がいい、仕事が早い、判断が的確。
その一方で、必要以上に人と群れず、近寄りがたいほど冷たい、という噂もよく耳にする。
幸子自身、何度か受付で対応したことがある。
ただし、それはあくまで業務上のことだ。
カルテや紹介状の受け渡しは、確認事項を淡々と伝えるだけ。相手は医師、自分は事務員。接点らしい接点などない。
だから、こんなふうに二人きりで同じ軒先に立つことになるなんて思ってもみなかった。
「あ……」
どうしよう。
挨拶をするべきだろうか。けれど、勤務時間外だし、向こうだって気まずいかもしれない。
迷った末に、幸子は軽く会釈だけした。
すると、カメラのピントを合わせるように、松澤の切れ長の目が、幸子を静かに捉えた。
それだけで、胸が妙にそわそわする。
病院にいるときと同じだ。
この人に見られると、まるで自分の曖昧な輪郭までくっきり見透かされるような気がする。
松澤は視線を逸らさず、そのまま低い声で言った。
「病院の受付にいるよね」
幸子は、思わず瞬きをした。
「……え?」
「外来の受付」
「は、はい……」
返事をしたあとで、自分の声が少し裏返っていたことに気づいて、耳が熱くなる。
まさか、覚えられていたなんて思わなかった。
海外帰りの若きエースとして期待の人物。患者からの評判も高い。腕がいい、仕事が早い、判断が的確。
その一方で、必要以上に人と群れず、近寄りがたいほど冷たい、という噂もよく耳にする。
幸子自身、何度か受付で対応したことがある。
ただし、それはあくまで業務上のことだ。
カルテや紹介状の受け渡しは、確認事項を淡々と伝えるだけ。相手は医師、自分は事務員。接点らしい接点などない。
だから、こんなふうに二人きりで同じ軒先に立つことになるなんて思ってもみなかった。
「あ……」
どうしよう。
挨拶をするべきだろうか。けれど、勤務時間外だし、向こうだって気まずいかもしれない。
迷った末に、幸子は軽く会釈だけした。
すると、カメラのピントを合わせるように、松澤の切れ長の目が、幸子を静かに捉えた。
それだけで、胸が妙にそわそわする。
病院にいるときと同じだ。
この人に見られると、まるで自分の曖昧な輪郭までくっきり見透かされるような気がする。
松澤は視線を逸らさず、そのまま低い声で言った。
「病院の受付にいるよね」
幸子は、思わず瞬きをした。
「……え?」
「外来の受付」
「は、はい……」
返事をしたあとで、自分の声が少し裏返っていたことに気づいて、耳が熱くなる。
まさか、覚えられていたなんて思わなかった。