恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
幸子は慌てて頭を下げた。

「こ、こんばんは……」

「すまない。遅くなった」

「い、いえ!お忙しいのにすみません」

「これ」

大きな紙袋を手渡され、それが思いの外、重たい。

「……え?」

「子猫に」

紙袋の中を覗くと、小さな缶詰や猫用ミルク、それにぬいぐるみのようなおもちゃが入っていた。

「こんなに……!」

これを渡すためにわざわざ来てくれたんだ。
幸子は思わず顔を上げた。

「先生、コレ買ってきてくださったんですか?」

「開いているペットショップがあったんだ」

松澤はあっさり言うが、昨日の今日で、これだけの物を買うのは、大変だっただろう。

「ドライフードだとまだ食えないだろうから、ミルクと離乳食」

袋の中にはさらに、小さな哺乳瓶まで入っていた。
幸子は思わず笑ってしまう。

「すごい……」

「?」

「先生、完全に猫のお父さんみたいです」

松澤は一瞬だけ固まった。

「なんだ、お父さんって」

そう言って、松澤はふっと笑った。
その柔らかな笑顔に、幸子の鼓動は大きく高なる。
< 36 / 100 >

この作品をシェア

pagetop