恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
段ボールの前で、しゃがんだ松澤は、そっと手を伸ばす。
子猫は小さく鳴きながら、大きな手に顔をすり寄せた。
「温かいな。体温も戻ってる」
医者の目だ。
「先生、やっぱりすごいですね」
松澤は首を振る。
「普通だよ。小さい生き物は、むしろ難しい。人間より状態が読みにくい」
そして立ち上がると、幸子の方を見た。
「倉田」
名前を呼ばれて、幸子はびくっとする。
「……はい」
「この猫が助かったのは君のおかげだ」
幸子は慌てて首を振った。
「そんな……」
「本当だ」
松澤は静かに言った。
「大抵は見て見ぬふりで、拾ったりできない」
幸子は子猫を見つめた。
小さな命。
「……放っておけなかっただけです」
松澤はしばらく黙っていた。
「君はそういう人なんだな」
ぽつりと落ちたその言葉が、胸の奥に残る。