恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
静かな声だった。
それでも、その中にある本音は隠せなかった。
「誰もいない部屋に帰るのが、ちょっと怖くて……だから、温もりが欲しかったんだと思います」
そこまで言ってから、はっとする。
こんなことまで話すつもりではなかったのに、と。
顔を上げられないまま、視線を落とす。
けれど、松澤はその言葉を否定しなかった。
ただ一歩、自然に距離を詰める。
それは、吐息がかかるほど近い。
逃げ場のない距離なのに、不思議と身構えなくていいと思えた。
「いいんだ。理由なんて関係ない」
低い声が、すぐ近くで落ちる。
幸子は思わず顔を上げる。
松澤の視線が、まっすぐに幸子を捕らえていた。
「この子が助かったのは事実だ」
飾りのない言葉。
それでも、その言葉に救われた気がした。
「……でも」
言いかけて、言葉が続かない。
松澤はほんのわずかに眉を寄せる。
「ひとりが怖いなら、そう言えばいい。強がる必要はないんだ」
その言葉が、胸の奥に静かに落ちる。
幸子は何も言えず、ただその視線を受け止めた。
鼓動がトクトクと大きく波打ち、その音が松澤に聞こえてしまいそうなほどだった。
そのとき、松澤の手がわずかに動いた。
幸子の肩へと伸びかけ、触れる直前で、止まる。