恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
幸子は一瞬だけ言葉に詰まり、それでも静かに首を振った。
「……何もありません」
「ほんとに?」
「だって、おかしいじゃん」
二人の圧のある雰囲気に、幸子は後ずさる。
「本当に、仕事で話すだけです」
「ふうん……。松澤先生に話しかけらたからって、調子に乗らないでよね」
「そうよねー」
納得していない様子のまま、視線だけが残る。
そのときだった。
「そこ、通路を塞ぐな」
低く、落ち着いた声が背後から響いた。
空気が、一瞬で変わる。
三人が同時に振り返る。
白衣のまま、カルテを手にした松澤が立っていた。
いつもの無駄のない表情。
けれど、その視線はまっすぐこちらへ向けられている。
「患者さんの通行の妨げになるだろ。導線を塞がない」