恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
夜の街は、明かりがともり、行き交う人の流れの中に、二人も自然と紛れ込んでいく。
どこへ向かっているのか、特に聞くこともできないまま歩いていると、ふいに松澤が足を緩めた。

「倉田」

名前を呼ばれ、反射的に顔を上げる。

「はい」

「このあと、時間あるか」

唐突な問いかけに、一瞬だけ思考が止まる。
けれど、すぐに小さく頷いた。

「……はい、大丈夫です」

そう答えながらも、胸の奥が少しだけ落ち着かなくなる。
何を言われるのか、わからなかったから。

松澤はその反応を確認すると、特に表情を変えることなく続けた。

「じゃあ、飯に行こう」

「……え?」

思わず足が止まりかける。
驚きと戸惑いが、そのまま声に出てしまった。

「でも……」

すぐに言葉を探す。
さっきまで一緒に買い物をして、いろいろ買ってもらったのに、そのうえでさらに食事までというのは、どう考えても遠慮すべきではないかと思ってしまう。

しかし、松澤は柔らかな声でこう言った。

「いつも、ご馳走になっているから」
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