恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
子猫は、まるで助けを求めるように、もう一度細く鳴いた。
幸子はしゃがんだまま唇を噛み、子猫を見つめる。
雨は容赦なく降り続いていた。このままここに置いていけば、朝まで無事でいられるとは思えない。
「かなり弱ってるな」
隣で松澤が低く言った。
幸子が顔を上げると、松澤も子猫のそばにしゃがみ込んでいた。
その距離が思っていたより近くて、胸の鼓動がドキンと大きな音を立てる。
そんな幸子に気づかず、松澤は高価そうなジャケットの裾が濡れるのも気にせず、長い指でそっと子猫の様子を確かめている。
その横顔は病院で見るときと同じように冷静なのに、どこか張りつめていた。
「ぱっと見では大きな外傷はなさそうだけど、低体温のほうが心配だ」
医師らしい落ち着いた声音だった。
けれど、その言葉に幸子の胸はますますざわつく。
「どうしましょう……」
独り言のように零すと、松澤は雨の通りの先へ目を向けたまま言った。
「母猫が戻る可能性もある。でも、この雨の中で待つのは危険だな」
「そう、ですよね……」
子猫はかすれた声で鳴き、震える小さな身体をさらに縮こまらせた。
見ているだけで胸が痛い。