恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
しばらくして、運ばれて来た料理に、幸子は思わず息を呑む。
盛り付けは美しく、まるで絵のように整っている。

「……すごい」

思わずこぼれた声に、松澤は視線だけをこちらに向ける。

「そうか」

松澤は、ホッとしたような表情を見せた。そして、ナイフとフォークを手に取り、食べ始める。
その所作もまた、無駄がなくて綺麗だった。

幸子も見よう見まねで食べ始める。
口へ運ぶと、思わず目を見開いた。

「……おいしい」

驚きが、そのまま声に出ていた。
素材の味がはっきりとわかるのに、優しくまとまっていて、どこにも引っかかりがない。
知らなかった味だと思った。

自分の知っている“美味しい”とは違う種類のものだった。

「口に合ったか」

静かな声が落ちる。
顔を上げると、松澤がこちらを見ていた。

「……はい」

素直に頷く。
その反応に、松澤はほんのわずかに目を細めた気がした。
それだけの変化なのに、なぜか胸の奥があたたかくなる。

「よかった」

短い一言。
けれど、それが妙に印象に残った。

自分が美味しいと思ったことを、喜ばれている。
それがどうしてこんなに嬉しいのか、うまく説明できない。
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