恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
何を言われたのか、幸子にはすぐには理解できなかった。
けれど、遅れて意味が追いついた瞬間、胸の奥が、強く揺れる。

「……そんな」

うまく言葉が出てこない。

嬉しいのに、戸惑って、どうしていいかわからない。
こんなふうに、自分の作ったものを評価されたことは、あまりなかった。
まして、それを松澤に言われるなんて。
信じられないような気持ちと、じんわりと広がるあたたかさが、胸の中で混ざり合っていく。

「……また、食わせてくれ」

続けられた一言に、思考が止まる。

顔がカァっと熱を持ったのが自分でもわかった。
恥ずかしくなってうつむくと、フォークを持つ手が、ほんの少しだけ震えていた。

「……はい」

それ以上の言葉は出てこなかった。

再び料理に口をつける。
あんなに美味しかった料理の味が、ぜんぜんわからなくなっていた。
ふと、顔をあげると松澤と視線がからみ、あわてて、料理へ視線を戻す。

目の前にいる人。
その存在が、こんなにも空気を変えるなんて思わなかった。

松澤はいつも通りの表情で食事を続けている。
特別なことは何もしていない。

それなのに……。
さっきよりも、少しだけ距離が近くなった気がした。

言葉にしなくても、伝わるものがある。
そんな気がした。
 
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