恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
「……どうして」

ぽつりと、言葉がこぼれる。

「お前が、噂を鵜吞みにして、違う方向に考えてただけだ」

胸の奥に、じんわりと広がっていく。
理解が追いつくより先に、感情が動いていた。

あの時間は、ちゃんと意味のあるものだったのだと。

そう思えた瞬間、胸の奥に、強く熱が灯る。

夜の空気は静かで、少しだけ冷たかった。
けれど、二人の間にある距離だけが、妙に熱を帯びている。

その数歩が、やけに遠く感じられた。

松澤は、幸子をまっすぐに見ていた。
ただ、確かめるように。

「……先生は、誰もが認めるハイスぺックな方と、一緒になる人だと……」

そんな事を言う自分自身がイヤだった。
それでも、止められなかった。

「私みたいなのじゃ……釣り合わないから……」

その一言が、静かに落ちる。

次の瞬間だった。
ぐっと、距離が縮まる。

反射的に顔を上げると、すぐ近くに松澤がいた。
< 87 / 146 >

この作品をシェア

pagetop