恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
幸子は腕の中の小さな温もり……いや、まだ温もりと呼ぶには頼りないほど儚げな命を見下ろした。
祖母と暮らす家に連れ帰っていいのか迷う。
でも、もし、この場に祖母がいたら、きっと迷わず助けただろう。
昔からそういう人だった。
捨てられた子猫も、雨の日に震える子犬も、道端でうずくまる人でさえ放っておけない。
幸子の根っこの優しさもまた祖母に教わったものだった。
だから、言った。
「……うちで良ければ、預かれます」
言ってしまってから、心臓が大きく跳ねた。
けれど松澤は、すぐには答えなかった。
意外そうに幸子を見つめ、その切れ長の目がわずかに揺れる。
「……いいのか?」
「古い家ですし、立派なことは何もできませんけど。タオルと、段ボールくらいならあります。あとはお湯も」
「でも、急だろ。ご家族にだって聞かないと」
「大丈夫です。祖母と二人暮らしで……その祖母は入院中なんです」
「それなら、尚更、勝手に生き物を飼うのはまずいんじゃないのか?」
「いえ、祖母なら必ず助けると思います」
松澤は黙って幸子を見つめたまま、やがて子猫へ視線を落とした。
ほんの数秒の沈黙だったのに、なぜだか長く感じる。
「……助かる」
低く落ちたその一言に、幸子はほっと息をついた。
同時に、別の意味で緊張も増していく。
「じゃあ、急ごう。少しでも温めたほうがいい」
「はい」