思い出せない恋人より、忘れられない人がいる ――記憶喪失の秘書は冷徹社長に溺愛される
休憩時間、私は思い切って同僚に声をかけた。

「……社長って、いつもあんな感じなんですか?」

何気ないふうを装って尋ねる。

すると、相手は一瞬だけ驚いたように目を見開いた。

「え……」

その反応に、私の方が戸惑う。

「どうかしました?」

「いえ……その……」

言い淀む様子に、胸がざわつく。

何かを、言いかけている。でも。

「本当に覚えていないんですね」

ぽつりと、そう言われた。

「え?」

思わず聞き返すと、同僚は慌てて首を振った。

「いえ、あの……余計なことは言わないように、社長から言われているので」

「……え?」

一瞬、言葉の意味が理解できなかった。

余計なことは、言わないように。それって――

「どういう……」

問いかけようとした瞬間、同僚は困ったように笑った。

「すみません。私からは何も言えないんです」

それ以上は、何も教えてくれなかった。
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