思い出せない恋人より、忘れられない人がいる ――記憶喪失の秘書は冷徹社長に溺愛される
「ありがとうございます。でも大丈夫です」

そう返した、その瞬間。

「……何の話だ」

低く、鋭い声が割り込んできた。

はっとして振り向く。

そこには、光林社長が立っていた。

いつの間に。

その視線は、まっすぐに私ではなく、男性社員へと向けられている。

「いえ、広中さんが復帰されたばかりなので、少しフォローを――」

「その必要はない」

言い切る声に、空気が一瞬で冷える。

「彼女の仕事は、すべて私が把握している」

淡々とした口調だった。

けれど、その中に明らかな拒絶が混じっている。

「……失礼しました」

男性社員はそれ以上何も言えず、軽く頭を下げてその場を離れた。

残されたのは、私と社長だけ。

重たい沈黙が落ちる。

「……あの」

戸惑いながら声をかける。

「今のは……」
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